生成AI動画の著作権と商用利用|広告で使う前に確認する4点

生成AI動画の著作権と商用利用|広告で使う前に確認する4点(表紙)

生成AI動画の著作権と商用利用|広告で使う前に確認する4点(表紙)

生成AIで映像を作れるようになって最初に立ち止まるのが、この動画を広告に使って本当に大丈夫なのかという点です。ツールの利用規約には「商用利用可」と書いてある。それでも、社内の法務やクライアントに説明を求められたとき、その一行だけでは足りないことに気づきます。

生成AI動画の著作権と商用利用をめぐる論点は、ひとつの大きな問題ではありません。入口・工程・出力・契約という4つの段階に分けると、確認すべきことがはっきりします。

26℃(株式会社ニジュウロクド)は、フルAIで制作したCMを地上波で放映した実績があります。テレビCMは放映前に媒体側の考査を通過する必要があるため、自社で「問題ない」と判断しただけでなく、外部の基準による確認を経て世に出ている状態です。この記事では、一般的な整理に加えて、その4段階を制作現場でどう運用しているかを公開します。

結論から先に

  • 権利の論点は入口(素材の出所)・工程(学習のさせ方)・出力(誰に似ているか)・契約(権利の行き先)の4段階に分けて確認する
  • ツールの利用規約は「入口」しかカバーしない。残り3つは制作の進め方と契約で決まる
  • 広告で本当に問題になるのは著作権より、出力が実在の人物やブランドに似てしまうこと
  • 発注側が確認すべきなのは「AIを使ったか」ではなく、どの工程で誰が何を確認したか、後から辿れるか

生成AI動画の商用利用とは

生成AI動画の商用利用とは、AIで生成した映像を広告・CM・販促など、収益に関わる目的で使うことです。 個人が趣味で作る場合と違い、企業が広告として世に出す場合は、著作権だけでなく肖像権・商標・契約上の権利帰属まで含めて確認が必要になります。

ここで多くの人がつまずくのは、「商用利用可」という言葉が、どこまでを保証しているのか分からないという点です。ツールの規約が保証しているのは、たいていの場合「そのツールで生成した出力を、あなたが商業目的で使ってよい」という許諾だけです。生成された映像が第三者の権利を侵していないことまでは、保証していません。

つまり、生成AI動画の著作権と商用利用の問題は、ツールを選んだ時点では半分も解決していないということです。残りは、どう作るか(工程)と、誰にどう渡すか(契約)で決まります。

この記事は実務上の整理であり、個別案件の法的判断ではありません。具体的な案件については、必ず自社の法務部門または専門家にご確認ください。

権利の論点は4段階に分けて考える

26℃では、AIクリエイティブの権利・安全性への対策を、次の4段階に分けて設計しています。漠然と「AIは権利が心配」と考えるより、どの段階の話をしているのかを切り分けたほうが、確認も説明も早くなります。

生成AI動画の権利を確認する4段階:入口(素材の出所)/工程(学習のさせ方)/出力(誰に似ているか)/契約(権利の行き先)

1. 入口 ― 素材の出所はクリーンか

出発点となる素材が、どこから来たものか。ここが不透明だと、後続の工程をいくら丁寧にやっても説明ができません。起点の素材をすべて自社で0から制作していれば、出所の説明は最もシンプルになります。

2. 工程 ― 他人の著作物を学習させていないか

生成の過程で、第三者の著作物を学習データとして取り込んでいないか。「AIを使っている」と一括りにされがちですが、他人の作品を学習させて出力する使い方と、自社で用意した素材を加工する使い方は、権利上まったく別の話です。

3. 出力 ― 実在の人物・ブランドに似ていないか

広告で実際に問題になりやすいのは、この段階です。生成された人物が実在のタレントに似てしまう、既存キャラクターを想起させる、他社のロゴやパッケージに近い意匠が映り込む。意図していなくても、似てしまえば肖像権や商標の問題になりえます。

26℃では、演者はAIアバターとし、実在の人物・ブランド・キャラクターを模倣しない運用としています。

4. 契約 ― 納品後、権利はどこに行くか

作ったものを、最終的に誰がどこまで使えるのか。使用期間の制限、媒体の制限、二次利用の可否。ここが曖昧なまま進むと、「作ったのに使えない」「来年また費用が発生する」という形で後から効いてきます。

26℃の場合は完全買い切りで、著作権・肖像権とも譲渡する形をとっています。

ツールの利用規約を読んでも解決しないこと

生成AIツールの利用規約を読み込むことは必要です。ただし規約が答えてくれるのは、先ほどの4段階のうち「入口」の一部だけです。

段階 ツールの規約で分かること 規約では分からないこと
入口 出力を商用利用してよいか 実際に使われた素材の出所
工程 (多くの場合、記載なし) どの素材を、どう学習・加工したか
出力 (保証しないと書かれていることが多い) 生成物が誰かに似ていないかの確認
契約 ツール提供者との関係のみ 発注者と制作会社の間の権利帰属

規約の確認で安心してしまうと、広告として世に出したときに問題になる「出力」と「契約」が空白のまま進むことになります。この2つは、ツールではなく制作の進め方と契約書で埋めるしかありません。

なお26℃で使用している主なモデルは Kling / Seedance / Runway / Comfy UI / Stable Diffusion です。どのモデルを使ったかではなく、そのモデルに何を入力し、出力をどう検証したかが説明できる状態にしています。

地上波TVCMの場合、何が変わるか

Web広告とテレビCMで大きく違うのは、放映前に媒体側の考査があることです。自社で「問題ない」と判断しただけでは世に出ません。第三者の基準による確認を通過する必要があります。

このため、地上波を前提に工程を組むと、権利まわりの確認は自然と厳しくなります。後から「説明できる状態」を作るのではなく、最初から説明できるように作る必要があるためです。

26℃はフルAIで制作したCMを地上波で放映した実績があり、その基準を前提に工程を設計しています。配信やSNSだけを出し先とする場合でも、この水準で作っておけば、後から出し先を広げたときに作り直しが発生しません。

26℃が工程のどこで担保しているか

権利の話は、契約書だけでは担保しきれません。実際の制作工程のどこで、誰が何を見ているかまで含めて初めて説明可能になります。

26℃のAI映像制作工程:キャラ設計→世界観→合成→最終カットまで全工程を可視化し、日本国内スタッフが最終品質チェックを行う

工程をまるごと可視化する。 キャラ設計 → 世界観 → 合成 → 最終カットまで、制作画面のまま全工程を開示します。「どこで何をしたか」を後から辿れる状態にしておくことが、説明責任を果たす前提になります。

AI出力をそのまま納品しない。 生成された素材は必ず選別・修正の工程を通し、日本国内のスタッフが最終品質チェックを行います。出力が誰かに似ていないかの確認も、この工程に含まれます。

海外チームとの直接やり取りは不要。 日本側でワンストップ対応するため、権利や表現についての確認が、途中で翻訳や時差を挟まずに完結します。

発注前・契約前に確認する5項目

権利まわりに絞って、発注前に確認しておきたい項目です。技術や品質の確認項目については、別記事のAI CMが「気持ち悪い」と言われない作り方にまとめています。

# 確認する項目 なぜ必要か
1 起点となる素材の出所を説明できるか 入口が不透明だと、後工程をいくら丁寧にやっても説明できない
2 第三者の著作物を学習させていないか 「AIを使った」の中身によって、権利上の位置づけが変わる
3 出力が実在の人物・ブランドに似ていないか確認する工程があるか 意図しない類似でも肖像権・商標の問題になりうる
4 納品後の権利帰属と、使用期間・媒体の制限 制限があると、後から使えない・作り直しになる
5 どの工程で誰が何を確認したか、後から辿れるか 説明を求められたときに答えられる状態かどうか

このうち 1・2・3 は、契約後では確認しづらい項目です。見積もりや提案を受け取る段階で聞いておくことをおすすめします。

よくある質問

Q. 生成AIで作った動画は商用利用しても大丈夫ですか?

A. ツールの利用規約で商用利用が許諾されていることは前提ですが、それだけでは足りません。素材の出所(入口)、学習のさせ方(工程)、生成物が第三者に似ていないか(出力)、納品後の権利帰属(契約)の4点を合わせて確認する必要があります。特に広告用途では「出力」と「契約」が実務上の論点になります。

Q. AIが生成した映像に著作権は発生しますか?

A. 一般論としては、人間の創作的な関与の度合いによって扱いが変わるとされています。実務上より重要なのは、発注者が納品後にその映像を制限なく使えるかどうかです。これは著作権が発生するかどうかとは別に、制作会社との契約で明確にしておく必要があります。個別の判断は専門家にご確認ください。

Q. AI動画が他人の作品に似てしまった場合、どうなりますか?

A. 意図の有無にかかわらず、権利者から指摘を受ける可能性があります。そのため、生成物を確認する工程を制作側に持たせることが重要です。26℃では演者をAIアバターとし、実在の人物・ブランド・キャラクターを模倣しない運用としたうえで、日本国内のスタッフが最終チェックを行っています。

Q. AIタレントを広告に起用する場合、肖像権はどうなりますか?

A. 実在しない人物であっても、既存の人物に似ていれば肖像権の問題になりえます。逆に、実在人物を模倣しない前提で作られたAIアバターであれば、出演者の契約期間満了や活動休止に伴うリスクは発生しません。権利が完全に譲渡される契約であれば、期間の制限なく使い続けられます。

Q. 制作会社に確認すべきことは何ですか?

A. 「AIを使っているか」ではなく、どの工程で誰が何を確認したかを説明できるかです。素材の出所、学習の有無、類似確認の工程、権利帰属の4点について、具体的に答えられるかどうかが判断材料になります。

まとめ

生成AI動画の著作権と商用利用は、ひとつの大きな問題ではなく、入口・工程・出力・契約という4段階の確認作業です。ツールの利用規約が答えてくれるのはそのうち一部で、広告として世に出すときに効いてくる「出力」と「契約」は、制作の進め方と契約書で埋めるしかありません。

26℃は、フルAIで制作したCMを地上波で放映した実績をもとに、AI映像制作サービス「DIRECT FILM」を提供しています。工程の全開示、日本国内での最終品質チェック、権利の完全買い切りまで含めて設計しています。実際の制作物は制作実績でご覧いただけます。

AI映像制作の進め方、品質管理の考え方、権利の扱いをまとめた資料をご用意しています。社内での検討・稟議にそのままお使いいただけます。

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執筆:26℃ 編集部
AI映像制作サービス「DIRECT FILM」を運営する株式会社ニジュウロクド(26℃)の編集チームです。制作現場で実際に用いている基準をもとに、AIクリエイティブの実務情報を発信しています。

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