AI CMが「気持ち悪い」と言われない作り方|地上波TVCMの制作基準

AI CMが「気持ち悪い」と言われない作り方|地上波TVCMの制作基準(表紙)

AI CMの導入を検討すると、必ず目に入るのが「気持ち悪い」という反応です。生成AIを使ったCMが公開されるたびに、SNSや検索では違和感を指摘する声が集まります。これから発注する側からすれば、「うちも同じことを言われるのではないか」と不安になるのは当然です。

ただ、この違和感は「AIを使ったから」起きているわけではありません。その多くは、制作工程のどこかで人の判断が抜け落ちたときに発生しています。裏を返せば、工程を設計すれば防げるということです。

26℃(株式会社ニジュウロクド)は、フルAIで制作したCMを地上波で放映した実績があります。テレビCMは放映前に媒体側の考査を通過する必要があるため、自社で「問題ない」と判断しただけでなく、外部の基準による確認を経て世に出ている状態です。この記事では、違和感が生まれる技術的な理由を整理したうえで、その基準を通すために制作現場で実際に何をしているかを公開します。

結論から先に

  • 違和感の大半はAIモデルの性能ではなく、生成後の検証・修正工程の有無で決まる
  • テレビCMには媒体考査という外部チェックが入る。ここを通す前提で工程を組むことが、そのまま違和感対策になる
  • AIの出力をそのまま納品しない。選別・修正を挟み、日本国内のスタッフが最終品質チェックを行う
  • 「見た目の違和感」より権利の不備のほうが事業リスクとしては重い。入口・工程・出力・契約の4段階で対策する

AI CMの「気持ち悪さ」とは何か

AI CMの「気持ち悪さ」とは、映像内のディテールや文脈に、視聴者が説明しづらい不自然さを感じ取っている状態のことです。 そしてその大半は、使用したAIモデルの性能ではなく、生成後の検証・修正工程が設計されているかどうかで決まります。

生成AIは、指示に対してもっともらしい出力を返します。しかしその「もっともらしさ」は、人間が無意識に見ている細部までは保証してくれません。手の関節、視線の向き、影の落ち方、髪や布の動き。ひとつひとつは小さなズレでも、動画として再生された瞬間に、視聴者は違和感として受け取ります。

つまり違和感対策とは、AIの精度を上げる話ではなく、生成したものをどう検証し、どこで人が判断するかという工程設計の話です。

なぜ「気持ち悪い」と感じるのか ― 5つの技術的要因

違和感の正体は、おおむね次の5つに分解できます。

AI映像に「気持ち悪さ」が生まれる5つの技術的要因:不気味の谷、手・指・関節の破綻、視線と焦点のズレ、物理法則の破綻、ブランド文脈とのズレ

1. 不気味の谷

人物の造形が本物に近づくほど、わずかなズレが強い不快感につながる現象です。表情、視線、口の動きが「整っているのに微妙に違う」とき、視聴者は本物として認識できず、居心地の悪さを覚えます。あえてイラスト寄りに倒す、実写に寄せきる、といった振り切りの判断が必要になります。

2. 手・指・関節の破綻

静止画では見過ごされるレベルの破綻も、動画になると露見します。指の本数や関節の曲がる方向は、動きがついた瞬間に目立ちます。

3. 視線と焦点のズレ

会話シーンで、人物同士の視線が交差していない。手前を見ているはずの人物が奥を見ている。焦点の合っている位置が不自然。こうしたズレは、視聴者が言語化できないまま「なんとなく変だ」と感じる代表的な要因です。

4. 物理法則の破綻

影の落ち方、髪や衣服の揺れ方、液体の動き。現実の物理と食い違う挙動は、意識されないまま違和感として蓄積します。

5. ブランド文脈とのズレ

技術的には破綻していなくても、そのブランドがこれまで積み上げてきたトーンと合っていなければ、視聴者は「らしくない」と受け取ります。これは映像の品質ではなく、設計の問題です。

ここまでは、生成AIを扱う各社が共通して指摘している論点です。重要なのは、これらを知っているかどうかではなく、制作工程のどこで潰しているかです。

地上波TVCMを通すために、実際にやっていること

テレビCMは、制作したものをそのまま放映できるわけではありません。放映前に媒体側の考査があり、表現・表示・権利関係についての確認を通過する必要があります。

ここが、Web広告やSNS広告との決定的な違いです。自社の判断だけで出せる媒体と違い、地上波では第三者の基準による確認が必ず入ります。26℃がフルAIで制作したCMを地上波で放映できているのは、この外部チェックを前提に工程を組んでいるからです。

AI制作ラインで人が判断するポイント:企画・設計(人)→生成(AI)→選別・修正(人)→最終QA(人)→媒体考査(第三者)→放映

▶ 26℃のAI映像制作サービス「DIRECT FILM」について詳しく見る

AI出力をそのまま納品しない

26℃では、AIの出力をそのまま納品物にしません。 生成した素材は必ず選別・修正の工程を経由し、日本国内のスタッフが最終品質チェックを行います。

海外の制作チームと直接やり取りする必要がない体制にしているのも、確認の責任範囲を曖昧にしないためです。指示の意図が翻訳の過程で薄れると、違和感の芽は工程の後半まで残ります。

最終チェックで実際に見ているところ

  • 人物の視線・焦点が、会話や動作の関係性と一致しているか
  • 手指・関節が、動きの全フレームを通して破綻していないか
  • 影・髪・衣服が、光源と動きに対して矛盾していないか
  • 口の動きと音声が同期しているか
  • ブランドの既存表現とトーンが揃っているか
  • 商品・パッケージ・ロゴの形状が正確に再現されているか

このうち、商品やパッケージの再現性は、生成AIがもっとも苦手とする領域のひとつです。実在する商品を扱う以上、ここは人が見るしかありません。

ここで述べた工程を実際に通し、地上波で放映したフルAI制作のCMは、サイナスリンス様_花粉症編とサイナスリンス様_大学生編の制作実績ページでご覧いただけます。

制作工程を、すべて開示する

違和感や炎上を避けるうえで、もうひとつ効くのが工程の可視化です。

26℃では、キャラクター設計 → 世界観の設定 → 合成 → 最終カットまで、実際の生成ワークフローの画面をそのまま開示しています。どの工程で何を生成し、どこを人が直したのかを、後から辿れる状態にしています。あわせて、使用したツールと工程はトレース記録として残します。

これは「丁寧に作っています」というアピールのためではありません。発注した側が、社内やユーザーに対して説明責任を果たせるようにするためです。「どうやって作ったのか」を聞かれたときに答えられない状態は、それ自体がリスクになります。

実際の制作物は、制作実績ページでご覧いただけます。

▶ 26℃の制作実績を見る

権利・肖像の観点でのリスク回避

「気持ち悪い」という反応の隣には、必ず権利の問題があります。見た目の違和感より、権利の不備のほうが事業リスクとしては重いというのが実務上の感覚です。

AIクリエイティブの著作権・安全性に関する4つの対策:入口=権利クリーン性、工程=学習させない環境、出力=実在人物を模倣しない、契約=権利帰属を明確化

入口 ― 素材の権利をクリーンにする

生成の起点になる素材は、すべて自社で0から制作しています。他人の著作物を学習させて出力する形ではありません。素材の出所が説明できない状態を作らない、という前提です。

工程 ― 学習させない環境で作る

商用利用・データ非学習を前提とした環境で制作しています。お預かりしたデータがAIの学習に使われることはありません。

出力 ― 実在の人物を模倣しない

演者はAIアバターです。実在の人物・ブランド・キャラクターを模倣する運用はしていません。

これは炎上回避のためだけではなく、実務上の利点もあります。タレント起用に伴う肖像権の期限や、契約更新・引退といったリスクがなくなるためです。一度作った映像を、後から使えなくなる事態を避けられます。

契約 ― 権利の帰属を明確にする

権利の帰属と利用範囲は契約で明確化します。著作権・肖像権はいずれも譲渡する完全買い切りの形です。納品後に「この映像はどこまで使っていいのか」で迷う状態を残しません。

発注前に確認したい10項目

制作会社を選ぶとき、あるいは社内で進行中の案件を点検するときに、そのまま使える確認項目です。26℃に発注するかどうかに関係なく、AI映像を扱う案件であれば共通してチェックすべき内容です。

# 確認項目 なぜ確認するか
1 生成の起点になる素材は誰が作ったものか 素材の出所が説明できないと、権利の追跡ができない
2 預けたデータが学習に使われない契約になっているか 自社の商品画像や資料が外部モデルに残るリスク
3 演者は実在の人物に似ていないか。確認プロセスはあるか 意図しない類似は肖像権の問題になりうる
4 著作権・肖像権は納品後どうなるか 二次利用や期間の制限があると、後から使えなくなる
5 どの工程で何をしたか、後から辿れるか 説明を求められたときに答えられる状態か
6 AI出力をそのまま納品していないか。人が見るのはどこか 検証工程の有無が、違和感の量を決める
7 出し先の媒体基準を満たす確認をしているか 地上波・配信・SNSで求められる水準は異なる
8 違和感が出た場合、どこまで修正できるか 修正範囲が契約前に決まっていないと揉める
9 既存のブランド表現と整合させる工程があるか 技術的に問題なくても「らしくない」は起きる
10 問題が起きた場合の責任分界と対応体制 事前に決めていないと、発生後に動けない

このうち 1・2・3・5 は、発注前でなければ確認しづらい項目です。契約前の段階で聞いておくことをおすすめします。

よくある質問

Q. AIが気持ち悪いと言われるのはなぜですか?

A. 人物の表情・視線・手指の動きなどが「整っているのにわずかにズレている」状態を、視聴者が本物として認識できずに不快感を覚えるためです(不気味の谷現象)。加えて、影や髪の動きといった物理的な破綻、ブランドの文脈と合わない使い方も要因になります。

Q. なぜAIが生成した顔は気持ち悪く感じるのでしょうか?

A. 人間は顔の認識に特化しているため、わずかな不自然さも検出してしまいます。左右の対称性が整いすぎている、肌の質感が均一すぎる、視線の焦点が合っていないといった要素が重なると、違和感が強く出ます。意図的に造形を実写から離す、あるいは最終工程で人が調整する、といった対応が必要です。

Q. 生成AIはなぜ嫌悪されることがあるのですか?

A. 映像そのものの品質だけでなく、「権利関係が不透明ではないか」「手を抜いているのではないか」という疑いが同時に向けられるためです。工程を開示し、素材の出所と人の関与を説明できる状態にしておくことが、この種の反応への対応になります。

Q. AI生成動画はなぜ静止画より気持ち悪く感じるのですか?

A. 静止画では見過ごされる破綻が、動きがつくと露見するためです。関節の曲がる方向、影の追従、髪や衣服の揺れ方、口の動きと音声の同期。いずれも「時間軸が加わってはじめて破綻がわかる」種類の要素です。動画の検証は、静止画より工程数が必要になります。

まとめ

AI CMの「気持ち悪さ」は、AIを使ったことの必然ではありません。生成したものを誰がどの工程で検証し、どこで人が判断するか ― その設計の有無によって決まります。

26℃は、フルAIで制作したCMを地上波で放映した実績をもとに、AI映像制作サービス「DIRECT FILM」を提供しています。工程の全開示、日本国内での最終品質チェック、権利のクリーン性の担保まで含めて設計しています。

AI映像制作の進め方、品質管理の考え方、権利の扱いをまとめた資料をご用意しています。社内での検討にそのままお使いいただけます。

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執筆:26℃ 編集部 AI映像制作サービス「DIRECT FILM」を運営する株式会社ニジュウロクド(26℃)の編集チームです。制作現場で実際に用いている基準をもとに、AIクリエイティブの実務情報を発信しています。

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