AIアバターを広告に使う5つのリスク|実在タレントとの違いと対策

AIアバターを広告に使う5つのリスク|実在タレントとの違いと対策(表紙)

「広告の出演者を、AIアバターにできないか」——こうした検討が、現実的な選択肢になってきました。スケジュールや契約期間に縛られず、世界観に合わせて外見を設計できる。一方で、「誰かに似てしまったら」「権利は誰のものか」「見た人にどう受け止められるか」という不安は、社内で説明しきれないまま残りがちです。

AIアバターを広告に使うリスクは、ツールそのものの危険性とは別のところにあります。出演者として世に出す以上、「顔」にかかわる固有のリスクがあるからです。そのリスクは5つに分けられ、多くは制作工程と契約で先に抑えられます。ただし、実在タレントの知名度はAIでは代替できません。そこも正直に書きます。

26℃(株式会社ニジュウロクド)は、フルAIで制作したCMを地上波で放映した実績があります。この記事では、5つのリスクと実在タレントとの違い、そして工程のどこでリスクを抑えるかを整理します。

結論から先に

  • AIアバターを広告に使うリスクは、実在人物との類似・権利の所在・視聴者の反応・アバターの共用・表記の方針の5つに分けて考える
  • 重いのは「誰かに似てしまうこと」と「権利の所在が曖昧なこと」。どちらも制作工程と契約で先に潰せる
  • ブランドの"顔"として使うなら、既製のアバターではなくキャラクターを個別に設計する
  • 実在タレントの知名度はAIでは代替できない。AIアバターの強みは、出演者側の事情に左右されずに使い続けられること

広告におけるAIアバターとは

広告におけるAIアバターとは、生成AIで作った実在しない人物を、広告やCMの出演者として起用するものです。 AIタレント、AIモデルなど呼び方はさまざまですが、この記事ではまとめてAIアバターと呼びます。

使い方は大きく2つに分かれ、どちらを選ぶかで後述するリスクの大きさが変わります。

  • 既製のアバターを使う — サービスが用意した人物から選び、台詞や動きをつける
  • キャラクターを設計して作る — 案件ごとに、ブランドや世界観に合わせて出演者を設計する

生成AI動画の権利の全体像(入口・工程・出力・契約の4段階)は生成AI動画の著作権と商用利用で整理しています。この記事は、そのうち「出演者」にかかわる部分を掘り下げた各論です。

この記事は実務上の整理であり、個別案件の法的判断ではありません。具体的な案件については、必ず自社の法務部門または専門家にご確認ください。

AIアバターを広告に使う5つのリスク

AIアバターを広告の出演者にするときのリスクは、次の5つに分けると整理しやすくなります。

AIアバターを広告に使う5つのリスク:実在人物との類似、権利の所在、視聴者の反応、アバターの共用、表記の方針

1. 意図せず実在の人物に似てしまう

生成AIが作る顔は学習データの影響を受けるため、特定の人物を指定していなくても、実在の人物、特に著名人を想起させる顔になることがあります。

出演者は画面の中心に映り、繰り返し人の目に触れます。似ていれば気づかれやすく、肖像権などの問題になりえます。法的な判断とは別に、「誰かに寄せたのでは」という疑念が出るだけでも、ブランドにとっては十分な火種です。

防ぐには、作る段階で「特定の人物に寄せない」ことを前提にし、出来上がった顔を人の目で確認することです。発注時に依頼書で人物の扱いを決めておく方法はAI動画を発注するときの注意点にまとめています。

2. 権利の所在が曖昧になりやすい

実在タレントなら、肖像権は本人にあり、出演契約で使用範囲を決めるという型があります。AIアバターは、「この顔は誰のものか」が曖昧なまま進みやすいのが難点です。確認すべき場所は3つです。

  • ツールの利用規約:生成物をどこまで商用利用できるか
  • 制作会社との契約:著作権・肖像権の帰属、使用期間や媒体の制限
  • 独占性:その顔や設定を、自社だけが使い続けられるか

ここが曖昧だと、続編や別媒体への展開のタイミングで止まります。

3. 視聴者の受け止め

ひとつは違和感です。表情や視線のわずかなズレは、動画になると目立ちます。これは工程で減らせる部分で、AI CMが「気持ち悪い」と言われない作り方で詳しく扱っています。

もうひとつは、「人を使わないこと」そのものへの反発です。出来とは関係なく、AIの出演者を否定的に受け止める人もいます。受け止め方は商材やターゲットで変わるため、「なぜこの広告はAIアバターなのか」を企画段階で説明できるかが分かれ目です。

4. 既製アバターの共用

見落とされやすいリスクです。既製のアバターを選んで使うサービスでは、規約によっては、同じアバターが他社の広告にも出演しえます。

単発の告知ならともかく、ブランドの"顔"として使うなら話は別です。自社の顔が別の商材の広告に出ていれば、積み上げた印象が薄まります。独占的に使えるかを規約で確認するか、キャラクターを個別に設計することを前提にしてください。

5. AIであることの表記・説明の方針

AIの出演者であることを表記するのか、どう説明するのか。出稿先や国によって規定が異なり、更新されることもあるため、制作前に最新の規定を確認し、社内で方針を決めておきます。

大切なのは、問い合わせを受けたときに「どう作ったか」を説明できることです。また、AIアバターに「使ってみた感想」を語らせるなど、実在の利用者の声と受け取られうる演出は、特に慎重に検討してください。

実在タレントとAIアバターの違い

両者は優劣ではなく、得意なことが違います。

実在タレントとAIアバターの比較:知名度、契約期間と出演者の事情、表現の自由度の違い

観点 実在タレント AIアバター
知名度 起用した時点から、本人の認知と好感を借りられる ゼロから育てる
契約期間 期間があり、満了後の使用は改めて取り決めることが多い 権利の取り決め次第。買い切りなら出演者に起因する満了はない
差し替え 活動休止などで差し替えを検討する場面がありうる 実在の出演者がいないため起きない
表現 本人のイメージの範囲内 年齢・外見・世界観を設計できる(実在人物に寄せない制約はある)
権利 出演契約で整理する型がある 規約と制作契約の両方で確認が必要

最大の違いは知名度です。実在タレントが持つ認知と好感は、AIアバターでは代替できません。

一方でAIアバターは、出演者の契約期間の満了や、出演者側の事情による差し替えといった事態が、基本的に起こりません(権利の帰属が契約で整理されていることが前提)。ブランド独自の顔を育て、シリーズで使い続けたい場合に効いてくる性質です。

リスクを制作工程でどう抑えるか

5つのリスクのうち、類似・権利・共用の3つは、制作工程と契約で先に抑えられます。視聴者の反応と表記は、企画段階で方針を決める領域です。以下は、26℃が実際にとっている運用です。

キャラクターを設計するところから始める

26℃の制作工程は、キャラ設計 → 世界観 → 合成 → 最終カットの順に進みます。出演者は既製品から選ぶのではなく、工程の最初にキャラクターとして設計します。これが共用を避ける前提になります。工程は制作画面のまま開示するため、顔がどう決まったかを発注側が確認できます。制作工程の全体像はAI CM制作とは?実写CMとの違いと、制作の流れを工程で解説で解説しています。

実在の人物・ブランド・キャラクターを模倣しない

演者はAIアバターとし、実在の人物・ブランド・キャラクターを模倣しない運用としています。似てしまってから直すのではなく、最初から寄せないことを前提に作ります。AIの出力はそのまま納品せず、日本国内のスタッフが最終品質チェックを行います。

権利の帰属を契約で明確にし、記録を残す

権利の帰属と利用範囲は契約で明確にし、完全買い切りで著作権・肖像権とも譲渡します。「このアバターは誰のものか」で迷う状態を、納品の時点で残しません。あわせて制作の経緯をトレース記録として残すため、表記の方針や問い合わせへの対応でも説明の根拠になります。

地上波の基準を前提に作る

テレビCMは放映前に媒体側の考査があります。26℃はフルAIで制作したCMを地上波で放映した実績(制作事例)があり、その基準を前提に工程を設計しています。

実際の制作物は制作実績で、サービスの詳細はDIRECT FILMでご覧いただけます。

AIアバターが向いている広告・向かない広告

向いている 慎重に考えたい
目的 ブランド独自の顔を育てたい タレントの知名度で一気に認知を取りたい
展開 シリーズ・複数パターンで長く使う 本人の話題性そのものが企画の軸
表現 非日常の世界観や設定が必要 実在の利用者の声として見せたい
信頼 世界観やキャラクターで伝える 「実在の人が出ていること」が根拠になる

「慎重に考えたい」に当てはまっても、出演者以外の部分(背景・世界観・演出)だけをAIで作るという組み方はできます。実写のほうが確実な領域は撮影不要のAI動画制作|工程が減る理由と、できないことで整理しています。

よくある質問

Q. AIアバターを広告に使うリスクには何がありますか?

A. 実在の人物との類似、権利の所在の曖昧さ、視聴者の違和感や反発、既製アバターの他社との共用、AIであることの表記方針の5つです。

Q. AIアバターは商用利用できますか?

A. ツールの利用規約で商用利用が認められていることが前提ですが、広告の出演者として使うならそれだけでは足りません。同じアバターを他社も使えるのか、納品後の著作権・肖像権の帰属、使用期間や媒体の制限まで確認してください。

Q. AIアバターが実在の人物に似てしまったらどうなりますか?

A. 意図の有無にかかわらず指摘を受ける可能性があり、放映・配信の停止や差し替えになれば影響は小さくありません。作る段階で特定の人物に寄せず、人の目で確認する工程を持つことが予防策です。法的な判断が必要な場合は専門家にご確認ください。

Q. 広告にAIアバターを使うとき、AIであることの表記は必要ですか?

A. 出稿先の媒体や国によって規定が異なり、更新されることもあるため、一律には言えません。制作前に最新の規定を確認し、社内で方針を決めておくことをおすすめします。

Q. 実在タレントとAIアバター、どちらを選べばいいですか?

A. 知名度を借りて短期間で認知を取りたいなら実在タレント、ブランド独自の顔を長く育てたいならAIアバターが向いています。

まとめ

AIアバターを広告に使うリスクは、実在人物との類似・権利の所在・視聴者の反応・アバターの共用・表記の方針の5つに分けると、何を確認すべきかがはっきりします。このうち類似・権利・共用は、キャラクターの個別設計と契約で制作前に抑えられます。

実在タレントの知名度はAIでは代替できません。そのうえで、ブランド独自の顔を、出演者側の事情に左右されずに使い続けたいなら、AIアバターは有力な選択肢になります。

26℃は、フルAIで制作したCMを地上波で放映した実績をもとに、AI映像制作サービス「DIRECT FILM」を提供しています。キャラ設計からの全工程開示、日本国内での最終品質チェック、権利の完全買い切りまで含めて設計しています。

AI映像制作の進め方、品質管理の考え方、権利の扱いをまとめた資料をご用意しています。社内での検討・稟議にそのままお使いいただけます。

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執筆:26℃ 編集部
AI映像制作サービス「DIRECT FILM」を運営する株式会社ニジュウロクド(26℃)の編集チームです。制作現場で実際に用いている基準をもとに、AIクリエイティブの実務情報を発信しています。

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