
「最近、AIを使ったCMが増えた」と感じている方は多いのではないでしょうか。宣伝・マーケティングの担当者であれば、気になるのはその先——他社はなぜAIを選んでいるのか、自社も検討すべきなのかだと思います。
AI CMは話題性を狙った一時的な流行に見えるかもしれません。ただ、作る側から見ると、企業がAIを選ぶ理由はかなり実務的です。そして「今」増えている背景には、広告として世に出せる品質で作れるようになったことがあります。
26℃(株式会社ニジュウロクド)は、フルAIで制作したCMを地上波で放映した実績があります。この記事では、AI CMが増えた理由を、ニュースや感想ではなく発注する企業側の事情として整理し、自社で検討する場合に何から考えればよいかまでまとめます。
結論から先に
- AI CMが増えたのは話題性だけではない。撮影の段取り・出演者の契約・出し分け・表現の自由度という、発注する側の実務上の事情がある
- 撮影と日程調整が発生しないため日程が読める。26℃では最短2週間での納品が可能
- 「今」増えた背景には、放送に耐える品質で作れるようになったことがある。ただし品質を決めるのはツールではなく工程
- 自社で検討するなら、出し先 → 狙い → AIである必然性 → 制作体制の順で考える
AI CMとは?「増えた」と感じる背景
AI CMとは、演者・背景・小道具といった映像素材の一部または全部を、撮影ではなく生成AIで用意して制作するCMのことです。 一部のカットだけにAIを使うものから、すべてをAIで生成する「フルAI」のものまで幅があり、テレビに限らず配信やSNSの動画広告でも使われています。
「最近AIのCMが多い」と感じる背景には、見る側が生成AIの映像に見慣れて気づきやすくなったことと、作る側が広告として出せる水準まで仕上げられるようになったことの両方があると考えられます。
ただ、話題性だけでは、企業は継続してAIを選びません。 CMは多くの関係者の承認を経て世に出るもので、「面白そうだから」では社内の決裁を通らないからです。本記事では、件数や市場規模ではなく、その裏にある発注側の理由を扱います。AI動画の制作全般についてはAI動画制作とは?自作と依頼の違いにまとめています。
企業がAI CMを選ぶ4つの理由
制作する側から整理すると、理由はおおむね次の4つです。

1. 撮影の段取りが消え、日程が読める
実写のCMでは、撮影当日の前後に長い段取りがあります。出演者を押さえる、ロケ地の許可を取る、全員の予定が合う日を探す、天候を待つ。撮り直しになれば、これをもう一度回します。
CMは、放映開始日やキャンペーンの開始日が先に決まっていることが少なくありません。締め切りが動かせない仕事で、日程が読めないことは大きなリスクです。AIで制作すれば撮影という物理的なイベントそのものがなくなり、段取りに引きずられて日程が崩れることが起きにくくなります。26℃で最短2週間での納品が可能なのは、撮影と日程調整が発生しないためです。どの工程が消えるのかは撮影不要のAI動画制作|工程が減る理由と、できないことで工程ごとに整理しています。
2. 出演者の契約にまつわる事情が発生しない
タレントや俳優を起用するCMは、出演契約の期間や範囲に縛られます。契約期間が終われば映像は使えなくなり、出演者側の事情で予定より前に使えなくなることもあります。
AI CMの演者はAIアバターです。26℃では実在の人物・ブランド・キャラクターを模倣しない運用としたうえで、著作権・肖像権ともに譲渡する完全買い切りの形で納品しています。出演者の契約期間や更新を気にせず、作った映像を使い続けられます。
一方で、タレントの知名度そのものを借りたいCMでは、AIは代わりになりません。 権利の考え方は生成AI動画の著作権と商用利用で、AIアバターと実在タレントの違いはAIアバターを広告に使う5つのリスクで整理しています。
3. 複数パターン・複数尺を出し分けやすい
同じキャンペーンでも、テレビ用の15秒・30秒、配信向けの横型、SNS向けの縦型と、出し先ごとに尺や画角を変えた素材が必要になることは珍しくありません。
撮影ありの案件では撮影の時点で撮り分けておく必要があり、撮り漏れは再撮影です。AIなら、足りないカットを撮り直すのではなく、作り直すことで対応できます。反応を見て訴求を変えたパターンを追加する運用にも向いています。
4. 実在しない世界観・季節・場所を表現できる
真冬に夏の映像を作る。ロケが難しい場所や、現実には存在しない世界を舞台にする。撮影ではセットや特殊効果に手間がかかる表現も、AIでは生成の段階で設計できます。季節物の商品なら、季節を待たずに、その季節の映像を作れます。
4つに共通するのは、どれも撮影という物理的な制約から自由になることの効果だという点です。どれが決め手になるかは案件によって違います。
なぜ「今」なのか ― 放送に耐える品質になった
ここまでの4つの利点は、理屈としては以前から言えたことです。それでもここに来てAI CMが目につくようになったのは、AIで作った映像を、広告として世に出せる品質まで仕上げられるようになったからだと考えています。
生成AIの映像モデルは短期間で進化し、動きや質感の表現が安定してきました。26℃で使用している主なモデルは Kling / Seedance / Runway / Comfy UI / Stable Diffusion です。
ただし、ツールが良くなっただけでは、テレビCMにはなりません。 テレビCMは放映前に媒体側の考査があり、表現・表示・権利関係の確認を通過する必要があります。生成した映像は、選び、直し、確認する工程を経てはじめて放送に出せます。
26℃はフルAIで制作したCMを地上波で放映した実績があり、その立場から言えるのは、品質を決めるのは使ったモデルではなく工程だということです。
- AI出力をそのまま納品しない。 選別・修正の工程を通し、日本国内のスタッフが最終品質チェックを行います
- 工程をまるごと可視化する。 キャラ設計 → 世界観 → 合成 → 最終カットまで、制作画面のまま全工程を開示します
つまり、AI CMが増えたのは「AIで作れるようになったから」だけではなく、「AIで作ったものを、広告として出せる工程が組めるようになったから」です。AI CM制作の工程そのものはAI CM制作とは?実写CMとの違いと、制作の流れを工程で解説で、実際の制作物は制作実績でご覧いただけます。
増えたからこそ起きていること ― 違和感と反発
AI CMが増えれば、見る側の目も厳しくなります。「AIっぽい」「気持ち悪い」という反応は、その裏返しでもあります。
違和感の多くは、表情や視線のわずかなズレ(不気味の谷)、手指の破綻、ブランドのトーンとのズレから生まれ、生成後に人が検証・修正する工程があるかどうかで大きく変わります。詳しくはAI CMが「気持ち悪い」と言われない作り方にまとめています。
もうひとつは、AIを使ったこと自体への反発です。「手を抜いたのでは」「権利は大丈夫か」という疑いは、映像の出来とは別に向けられます。これに効くのは、なぜAIで作ったのかを説明できることと、どう作ったかを後から辿れることです。
自社で検討するなら、何から考えるか
他社のAI CMを見て「うちも」と考えるのは自然なことです。ただ、「他社がやっているから」は、4つの理由のどれにも当たりません。 検討するなら、次の順番で考えると判断を誤りにくくなります。

- 出し先を決める — 地上波か、配信か、SNSか。求められる品質の水準、尺、パターン数はここで決まります
- 狙いを決める — 認知を広げたいのか、季節のキャンペーンを告知したいのか。狙いが決まらないと、AIを使う意味も判断できません
- AIである必然性を確かめる — 4つの理由のどれが自社の課題に当てはまるか。実物の質感を正確に見せたい、特定のタレントを起用したいといった場合は、実写のほうが確実なこともあります
- 制作体制を選ぶ — 工程を開示してもらえるか、人が確認するのはどこか、権利は納品後どこに行くか。発注前に確認しておきたい部分です(進め方はAI動画を発注するときの注意点)
1と2が曖昧なまま「AIを使うかどうか」から考え始めると、AIで作ること自体が目的になり、前の節で触れた反発を招きやすくなります。社内のルールとして先に決めておく項目は生成AI広告のガイドライン|外注前に社内で決めておく6項目にまとめています。サービスの詳細は、26℃のAI映像制作サービス「DIRECT FILM」にまとめています。
よくある質問
Q. 最近AIのCMが増えたのはなぜですか?
A. 制作する側から見ると、日程が読める、出演者の契約期間に縛られない、複数パターンを出し分けやすい、実在しない世界観や季節を表現できる、という企業側の実務上の理由が大きいと考えています。加えて、広告として出せる品質で作れるようになったことが背景にあります。
Q. AIを使ったCMはどのくらいありますか?
A. 件数を示す統計は、当社では持っていません。一部のカットだけにAIを使う例など外から分からない使い方もあり、数を正確に捉えるのは難しいのが実情です。検討する立場であれば、「どのくらいあるか」より「自社の案件にAIである必然性があるか」で判断するほうが実務的です。
Q. AIのCMが気持ち悪いと感じるのはなぜですか?
A. 表情・視線のわずかなズレ(不気味の谷)、手指の破綻、影や髪の動きの不自然さといった技術的な要因と、ブランドのトーンと合っていないという設計上の要因があります。多くは、生成後に人が検証・修正する工程で抑えられる部分です。
Q. AIで作ったCMはテレビで放映できますか?
A. できます。実写と同じく放映前に媒体側の考査を通過する必要があり、生成した映像を選別・修正し、人が最終確認して仕上げることが前提です。26℃はフルAIで制作したCMを地上波で放映した実績があります。
Q. 自社でAI CMを検討するとき、最初に何を決めればいいですか?
A. 出し先です。地上波か、配信か、SNSかで、求められる品質の水準や尺、パターン数が変わります。次に狙いを決め、そのうえで「AIである必然性」があるかを確かめます。
まとめ
AI CMが増えたのは、話題性だけが理由ではありません。日程が読める、出演者の契約に縛られない、出し分けやすい、実在しない世界を描けるという企業側の実務上の事情と、それを広告として出せる品質で作る工程が組めるようになったことが背景にあります。
一方で、増えたからこそ違和感や反発も生まれています。自社で検討するなら、出し先 → 狙い → AIである必然性 → 制作体制の順で考えるのが近道です。
26℃は、フルAIで制作したCMを地上波で放映した実績をもとに、AI映像制作サービス「DIRECT FILM」を提供しています。工程の全開示、日本国内での最終品質チェック、権利の完全買い切りまで含めて設計しています。
AI映像制作の進め方、品質管理の考え方、権利の扱いをまとめた資料をご用意しています。社内での検討・稟議にそのままお使いいただけます。
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執筆:26℃ 編集部
AI映像制作サービス「DIRECT FILM」を運営する株式会社ニジュウロクド(26℃)の編集チームです。制作現場で実際に用いている基準をもとに、AIクリエイティブの実務情報を発信しています。
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